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マニュファクチャーズ・レップ事例【Manufacture’s Representative System】
アメリカには、マニュファクチャーズ・レップ(以下レップと呼びます)というシステムがあります。「Manufacture’s Representative」を直訳すると「メーカーの代理人」となります。一言でいうと、メーカーの外部営業員です。アメリカは、土地が広いために移動にも時間がかかります。各州に営業に行くのに、相当の時間と出張経費がかかり、また、一日で訪問できるところも時間的に限りがあります。また、各地に営業所を置くにも費用がかかります。それらの問題を解決すべく、合理的かつ効率的なレップシステムが生まれました
レップには、個人で動いているレップと呼ばれる人と、レップ・エージェンシーとしての組織(平均2人〜10人)があります。レップの位置づけは、メーカーの外部の営業員で、契約で定められた地域、業界に営業をかけていきます。売り上げに対するコミッションで動くシステムなので、メーカー側にしても、大きな負担になりません。また、レップは、在庫を持つ必要もなく集金リスクもないために低いコミッション(販売に手間、時間がかかる新商品ほどコミッションは高くなります。平均的なコミッションは、5%〜15%)でもやっていけます。
両者にとって利点があるシステムです。レップは、多くの場合、メーカーの名刺を持ち営業活動をします。受注した場合は、そのままオーダーはメーカーに流され、商品もメーカーから発送されます。入金もレップにではなく、メーカーに直接されます。レップは、商品の支払いを受けた時点(契約により、受注時、発送時の場合もあり得る)で、メーカーからコミッションが支払われます。レップは、営業、受注、発送、支払いがすべてスムーズに行われるように努力する義務があり、多くの場合、集金義務もレップにありますが、倒産、その他の理由により集金できない貸し倒れ損失は、最終的にはメーカーのリスクとなります。自社の営業員を抱えていても、このリスクは同じです。
レップは、販売ルートを持っています。その販売ルートに流せる商品を数点取り扱っています。売れないと利益が上げらないために、常に「売れる」「新しい」商品を探しています。彼らは既にルートを持ち、新たに開拓する必要がないため、販売速度も速いと言えます。多くの場合、契約で競合する商品は取り扱わないと定められてはいるものの、新しく市場性があると思われる商品が出た場合は、契約を解消し、鞍替えするということもありえます。自社で抱える社員でないために、人件費がかからないなどの利点もありますが、注意すべき点もいくつかあります。
レップは、営業はしますが、マーケティングについてはメーカーの責任になります。レップとの契約時には、多くの場合、マーケティング計画の提出を求められます。展示会への出展、広告掲載、DMなど、レップが売りやすい環境を作る必要があります。それらの支援がないと、レップを確保することも難しいと言えます。
業種によっても違いますが、多くの業種の場合、全米を8〜9のブロックに分け、それをTERRITORYと呼びます。地域分けです。レップは、その地域でのみ営業活動をすることになります。また、他業種にわたり販売できる場合は、業種も制限する場合もあります。これらの交通整理はメーカー側が行う行為で、REP同士が競合することのない環境を作っていく必要があります。
日本企業がアメリカで商品販売を検討するときに真っ先に挙がる方法として、レップの利用があります。しかし、巧みに利用できれば効果が望める反面、腕の良い者ほど強者が揃っている世界です。アメリカでのビジネスに慣れていない企業が生半可な知識で手を出すにはリスクが大きいことを認識する必要があります。ここに挙げた事例は、近年、日本からの進出企業が実際に陥ったケースです。
レップを使った場合の失敗事例
1)コンクリートポンプ車の販売事例
1台約25万ドルの小型コンクリートポンプ車を米国内で直販し、3年かかってようやく年間販売台数が40台前後のところまでこぎつけた。しかし、その時点で本社側からの資金援助が得られなくなった。ちょうどその頃、あるレップ・エージェンシーからの強いアプローチがあり、全米およびヨーロッパ市場への参入の可能性も感じられたので、そのエージェンシーをマスター・レップとして採用することにした。
このレップは、大型コンクリートポンプ車の取り扱いはしていたが、小型のものは扱っていなかった。商品が競合しないように見えたが、実はこの小型ポンプ車は、そのレップが以前から扱っていた大型ポンプ車の市場を脅かしていた。これまでは、大型のものしかなかったので大型を購入していた顧客の中には、価格も安い小型で十分であると判断する顧客も増えていた。レップは、この商品に脅威を感じていたのだった。
レップにすれば1台を売る手間は同じで、どうせ売るなら価格の高い大型車を売った方が儲けはよい。そのため、大型車を売りたい。彼らの真の目的は、実は小型コンクリートポンプ車を市場から閉め出すことにあった。契約後、レップはいっこうに動こうとせず、この商品の市場はないとの一点張り。契約不履行でレップとの契約は解消されたが、すでに半年から1年が過ぎていた。その間に、狭い業界ではいろいろな噂が広がってしまい、アフターケアも必要な高額商品を買おうという顧客は激減していた。その後、直販に戻したがすでに手遅れの状態となっていた。
(事例1の反省材料とポイント)
◎チャンスを確実なものにするために、アメリカ側には本社の業績に左右されない経営計画が必要。
◎レップに与える独占権や各種権利は、実績に連動させ、段階的に与えることが望ましい。
◎成果が上がらなかった場合、権利剥奪や軌道修正ができる旨を、契約書に盛り込む。同時に、短期間で契約見直しをできる仕組みにする。
◎依頼側の意図・目標・ゴールを曖昧にせず、明確な期限を定めてレップに認識させる。根本を誤ると、その後のギャップは広がる一方で修正は難しい。
◎どの業界も、入ってしまえば非常に狭い世界なので、大掛かりなマーケティングを行う前に、徹底した市場調査が重要になる。また、レップによる情報伝達に細心の注意を払う必要がある。
2)ジュラルミンケースの販売事例
アタッシュケースや、化粧品のケースなどに使用されている中国産の安いケースの販売に関して、レップを使用して全国的に拡販を試み、失敗した例がある。弱い者を守るアメリカでは、いくらレップとしっかりと契約を締結していても、またレップを訴訟しても、最終的にはメーカーの責任になる。そのために、大損失を出した例も何件かある。
ある企業は、RITE-AIDSに商品納品の契約で、売り場で販売前にダメージを受けた商品に関しても返品を受けるという条件で、レップを通しての商品販売を行った。ダメージ率をレップとも相談し、返品を考慮した上で価格設定を行い、販売した。しかし、ダメージによる返品が予想を大幅に上回り、多額の赤字を出してしまった。これは、業界に精通しているはずのレップに、故意にダメージ比率を大幅に低く教えられ、かつ開き直られた例である。別のケースでは、微妙でかつ曖昧な納期条件付きの注文を受け、結果的にコンテナ2本分が返品になった例がある。
ほとんどの場合が、メーカー側にレップおよびアメリカでの契約の知識が欠けていたため、言ってみれば、レップにうまく利用された例である。
アメリカでのビジネスに慣れない最初のうちは、専門家のアドバイスなしで独自にレップをコントロールすることは、非常に難しい。
(反省材料とポイント)
◎契約をしていてもレップに責任は負えない。責任はすべて企業側に回ってくる。
◎レップからの情報を盲信してはならない。必ず複数の視点で進行を管理し、検証する必要がある。
◎レップに任せきりで、成功することはありえない。
◎レップ法(REP LAW)という法律があり、頻繁に変更されているが、これは常に徹底研究していく必要がある。弱者を守る傾向のアメリカで裁判になれば、メーカーより弱い立場と見なされているレップが守られる可能性が高い。最終的にはメーカーがすべての責任を負わなければならなくなることをよく理解する必要がある。
3)競合商品への乗り換え
レップ契約書には、「競合の商品を取り扱ってはならない」という項目がある場合が多い。しかし、レップとの契約は、ほとんどの場合レップからの申し入れがあれば解消できる条件になっている。そのためにレップは、「売りやすい」「大量に売れる」「金額が高い」「メーカーの援護射撃がある」商品があった場合、品質・その他に関係なく、そちらに乗り換える可能性が高い。
契約が切れた後に、他社商品を販売するために、それまで契約していたメーカー側は何も言えない。レップは小売店と直結しており、緊密な人間関係を築いていることが多い。そのために、レップが商品を鞍替えした場合、小売店もレップとともに取扱商品を切り替えてしまう可能性が非常に高い。
レップと協同で新規開拓した顧客、つまりメーカー側で費用を出して行った広告宣伝も無駄になってしまう場合もある。
(反省材料とポイント)
◎レップにロイヤリティーを求めることは難しい。
◎レップとは一人一人が成果報酬で動く個人事業主である。一番売れる商品、一番良い条件に動く。
◎特定のレップへの依存度が高くなってしまうと、関係が悪くなったときのリスクが大きい。依存度、リスクを分散することが必須。
4)バイヤーサイド
ほとんどのレップは、バイヤー側についている。表向きはメーカー側の人間であるが、内輪ではないという認識を持っておく必要がある。彼らは、バイヤー側にとって有利な条件で取引を行うことがある。本来ならば、レップは販売手当などもメーカー側の立場で極力抑えるのが常識であるが、表向きはそのように言いつつ、実際はバイヤーのために、できるだけ多くのものをメーカーから出させるように仕向けてくる。管理する側は要注意である。
(反省材料とポイント)
◎レップのリクエストをいちいち聞いていたらキリがない。また、レップはバイヤー側につく人間であることも認識し、管理する必要がある。
5)アフターケアとメンテナンス
たとえ、どんなに徹底した教育をしても、売りっぱなしの傾向が非常に強い。
レップは多くの商品を取り扱っているために一つの商品に集中することはなく、
売れない商品に関してはほとんど力を入れない。
(反省材料とポイント)
◎アフターケアとメンテナンスに関しては、厳しい指導と管理体制をとる一方で、レップを信用しないもう一つの目を持つことが必要。
ほとんどの失敗事例は、3)4)5)いずれか、もしくは複数に当てはまります。そのために、イエスマンタイプのレップを使用する傾向がありますが、そのようなレップは、リスクが低い代わりに営業力も低くなります。
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