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ラグジュリー化が加速する米国高級車市場 〜不動のレクサス・ストーリー〜 (10/2/2004)
揺ぎないレクサスブランド
最近、ロサンゼルスのフリーウエイや街中を走っていても、“L”マークや”Lexus”の5文字が圧倒的に目に多く飛び込んでくる。日本トヨタの高級車ブランド、レクサスがここ数年BMW、メルセデスベンツを押さえて米国のラグジュリーカー部門において販売台数第一位をキープ、今なお躍進中だ。2003年度のレクサスの販売台数は、259,800台と過去最高。BMW240,900台、メルセデスベンツ218,600台と続く。10年前には年間販売台数10万台に満たなかったが、今では押しも押されぬレクサスのブランドと共にその存在感を大きく米国市場にアピールし続けている。レクサス、アッパレ!である。
トヨタがレクサスブランドをかざして米国市場に打って出たのが15年前。他のライバル会社は競争の厳しい高級車市場で日本企業が太一打ちできるとはどこも思っていなかったに違いない。”The doubters were asleep at the wheel.” と揶揄される通り、レクサスの出現に懐疑的な企業は、まさに車輪の下で惰眠を貪っていた、といえよう。10年が経つか経たないかの2000年までには、あれよあれよという間にアメリカとヨーロッパの高級車ブランドを押さえてレクサスは不動の地位を築くに至った。2004年に入ってもレクサスの8月までの合計販売台数は、対前年同期比14.9%増の188,693台。BMWが4.7%増の169,480台と依然衰えを知らない。
いまや、レクサスの牙城を揺るがすのは、かつてNO.1の座にいた企業がそうであったように、過信とそれから派生する驕りといかに戦っていくか、それが唯一の挑戦テーマである、と極言する識者も出てきたほど。顧客満足度調査でも常にトップの座にあるレクサスへの信用が大きな評判となり今の成功を勝ち取っている。今日のレクサスの成功を「他に類のない信頼性と耐久性、他社を圧倒するカスタマーサービス」と分析する専門家も多い。レクサスの持つ「よりソフトな乗り心地と運転のし易さ・扱いやすさ」が車好きで高齢化が進む世帯のニーズとベストマッチしていることも大きな躍進の理由である。ビジネスの常道であるベビーブーマーズ(1946年〜1964年の18年間に生まれたいわゆる団塊の世帯)をターゲット層とし、その中でも収入がピークを向かえる40代、50台に抜け目なく照準を合わせ続けてきたマーケティング戦略も見落としてはならない。
他社ライバルの動き
もちろん、他社の追随も激しい。GMCのキャデラックやBMW、ダイムラークライスラーのメルセデスベンツもベビーブーマーズの中でも最も車好きの層に焦点合わせをしたマーケティング展開を進めている。より大きめのエンジンを搭載することで、馬力を上げ加速をよくし、ステアリングもやや重めで大胆なスタイリングのモデルを提供している。
そんな中で、レクサスは高級車ブランドの中では最も保守的な車と評価される声も多い。それを受けてか、車のマークやエンブレムの新鮮さを保ち、若い顧客層を取り込むため、レクサスは今後4年間でラインアップすべてのデザインの一新を計画している。スポーツタイプのものやエンジンも大きいよりパワフルな車を市場に出していく計画である。日本などでも環境やエネルギー問題を背景とした車のコンパクト化、ミニ化が囁かれる一方、アメリカの高級車市場ではそんなものどこ吹く風、大型化、ラグジュリー化への傾向が顕著だ。
キャデラックもレクサスを高い標準を装備した手ごわいコンペチターとして素直に認めている。キャデラックの最近の報道を見ていても、販売台数ではレクサスに太刀打ちできず、今後はイメージの優位性を重視したマーケティング戦略に転換しようとしている。
今後の動向と展開
レクサスは今後10万ドル前後のflagship vehicle, つまりレクサスブランドを代表する更なる高級車を構想に据えている。例えば、4ドアのセダンタイプで、ベンツの122,000ドル前後するSシリーズのセダンと競争するモデルであったり、BMWの117,000ドル前後する7シリーズであったりと。メルセデスには7万ドル以上で販売できるモデルが半ダース以上あるが、レクサスには一切ないのが現状である。
ある専門家も「10万ドルするレクサスでは、販売台数を伸ばし市場をリードするところまでは行かないが、企業のイメージの高揚には大きく貢献できる」と言う。「レクサスは、高性能ハイブリッドタイプのスポーツカーを導入することで、ハイブリッドのジャンルの境界線を一気に打ち破るであろう」とも続ける。
ニューモデルの開発とは別に、トヨタは更なるサービスの質の向上に余念がない。レクサスのディーラーは、全米規模で過去1年、8億ドル(880億円)近くを販売台数の成長に遅れをとらないよう修理工場の整備増設や技術者の拡充に充てている。
レクサスの努力はまだまだ続く。全米で最初のディーラーとなったTustinレクサスは、昼間だけでは顧客へのサービスを捌きけれず、昼と夜の交代制を取り入れ、顧客が朝に車をピックアップできるサービスをスタートした。5時に勤務をスタート、その日の仕事がすべて終わるまで作業は続く。朝8時に出勤したときには、まだ、作業している者もいるという。
レクサスのある幹部は、「ライバル会社とは1周程度先を走っているが、実際のレクサスのスタンスは、一周遅れで後を追っている姿勢を貫いている。これこそが、レクサスが強い理由である」という。
こうして見てくると、時代のトレンドを見据えた新車種の開発や他社との競合対策も大事ではあるが、基本的にはマネジメントの健全な考え方と経営姿勢がトヨタレクサスを今の不動の地位に押し上げている背景にあることを見逃してはならない。
これまでのレクサスと他のライバル企業との戦い方を見ていて、童話に出てくるウサギとカメの競争を思い出す。どうしてカメが勝ち、ウサギが負けたのか。ウサギはカメをみて勝負に臨み、カメはウサギではなく遥か前方にあるゴールをみて歩み続けた結果である。本体のトヨタがそしてレクサスが、カメと同じ思いで過信し奢ることなく、ゴールから目をそらさずこの“カーレース”に臨む限り今の地位は当分揺るぐことはないであろう。
(利根川正則)