2011年7月8日

MICEに向けた取り組み(後半)

MICEを一言で説明すれば、観光集客と相互に補完する「集客装置」といえる。観光に比べ経済規模は小さいが、観光と車の両輪をなしている。以下、その特徴をまとめてみる。

1.経済効果
地域に落とすお金の額が観光客と比べ大きい。平均的滞在期間も長い。

2.通年の需要が見込める
観光は春や秋に集中。MICEは観光閑散期を補完してくれる。

3.経済不況の影響を受け難く、キャンセルが比較的少ない
主催者が公的機関や団体が多く、予め開催国が決まっていて持ち回り開催する場合が多い。

4.PR効果
会議や大会は「だれが参加するか」によって会の質が決まってくる。一般旅行者ではなく、発信力・ 影響力がある層が多く含まれるため、対外的なPR効果が期待できる。

5.再訪問につながる
MICE後、その開催地を気にいってもらうことで、再び旅行者として戻ってきてもらえる。

6 .受け入れ側のインフラ整備向上と質向上効果
言語やホスピタリティ、プロトコールを含め、質の高い受入サービスが求められるため、集客産業全般における受入の質の向上につながる。

7 .国際交流&国際理解の増幅
MICEの直接参加者のみならず幅広い地域住民の参加により、国際的な交流や親睦が図られる。

次に、世界のMICE事情であるが、知名度向上や地域経済の活性化に向けた国際会議の誘致開催に積極的である。近年、シンガポールやオーストラリアを中心に、国際会議や展示会等に加えたインセンティブツアーも含むMICE振興は各国で新たな潮流となっている。

2009年の国際会議件数は約11,500件。大陸別には、1位欧州(6,194件)、2位アジア(2,594件)、3位南北アメリカ(1,562件)、4位アフリカ(579件)、5位オセアニア(274件)を示し、アジアは対前年比190件増と需要を伸ばしている。国別では、1位アメリカ(1,085件)、2位シンガポール(689件)、3位フランス(632件)、4位ドイツ(555件)、5位日本(538件)となっている。

アジア・オセアニアの競合国は、シンガポール、韓国、オーストラリアであるが、各国とも総合戦略を構築して、MICE誘致開催に関する体系的な取り組みを始めている。

一方、日本のMICE事情だが、政府は観光立国の実現を目指し、基本目標のひとつとして「我が国における国際会議の開催件数を平成23(2011)年度までに5割以上増やすことを目標とし、アジアにおける最大の開催国を目指す」としている。3.11の大災害によって、この目標は大幅に下方修正しなくてはならないと思われる。

日本のMICE市場は、2兆3,191億円と推定されている。観光庁の推計によると、インバウンドに係るMICE市場については、約9,230億円となっている。 日本政府観光局(JNTO)が海外のMICE関係者に行った「対外的MICEブランド評価」のアンケート結果によると、 日本での取り組みに対する認知度が低いことが大きな課題となっている。日本はMICE開催において高費用構造(会場費と宿泊費)になっているが、「サービスの質」と「文化施設の充実」においては高い評価を受けている。

日本は残念ながらMICEの展開において他国に比べ相当出遅れてしまっている感は否めない。日本に存在する国際機関の数は数えるほど、一方、人口僅か18万人、面積17平方キロメートルのジュネーブに国際機関が集中し、世界から人々が集まる。シンガポールは、随一の財政力で強力に誘致支援策を推進し、お隣の韓国は国際基準のPCO等の人材育成で先行、オーストラリアも日本と拮抗している。包括的なSTRATEGYをグローバル展開の中で描きかつ実行できる業界を横断する人材の出現が待たれる。


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